「株は人気投票なので、自分の思い込みではなく“誰がどう判断するか”を冷静に見ないとあかん」と語る藤本茂さん
19歳で始めた株式投資を70年近く続け、試行錯誤しながら総資産20億円を築き上げた“日本のバフェット”の異名を取る88歳の現役トレーダー・藤本茂さん(シゲルさん)。――ブラックマンデーやバブル崩壊、リーマン・ショックなど数々の危機の経験を踏まえ、難局を乗り切る極意はどこにあるか。シゲルさんが得意とする「決算プレイ」について解説してもらった。
「決算プレイ」に勝つ秘訣
投資経験が豊富な「上級者」が挑戦したいのが、シゲルさんが得意とする「決算プレイ」だ。企業が発表する決算内容を材料に売買する手法であり、「結構自信があるんや」とシゲルさんは言う。
「企業の成績表である決算は株価に影響を及ぼし、大きく値動きする場合も多い。ですが、発表されて業績が上がったことが広く周知されてから買っても遅い。
決算が近づいてきたら、株価が上がりそうかどうかを判断する。新聞や四季報で事前の市場予想をチェックして、好決算になりそうなら買い増し、悪い決算になりそうなら決算前に売るなど手を打つ。決算は四半期ごとに年4回あって、上場企業が3900社以上あるので、単純に1万回以上の決算プレイのチャンスがあります」(以下、「」内コメントはシゲルさん)
2月10日には、頻繁に売買するホンダ系の車体プレスメーカーであるジーテクトの第3四半期決算が発表された。
「決算発表はその日の大引け後(取引時間終了後)でしたが、事前に減益予想となっていたので、株価が高いうちに2回売って利益を確定、その後、株価が下がったところで再び買いました。業績は減益とはいえ、悪くない内容なので翌営業日以降の値上がりを楽しみに買うわけです」
ただ、決算プレイは「決算が良いから買い、悪いから売り」という単純なものでもない。シゲルさんが説くのは「風が吹けば桶屋が儲かる」という発想だ。
「7日にSUBARUの決算発表で通期の業績予想が上振れという記事が出て、これは一見、好材料に映ります。だけど私はこの日、この記事を切り抜いてノートの上に置き、SUBARUではなく、あえてホンダ系のジーテクトを買いました。同社はSUBARU向けの部品も手がけ、工場も拡張している。
そのままSUBARUを買っても『材料出尽くし』となって高値掴みになりかねない。Aを見てBを買うように、ちょっとした工夫が必要でしょうね」