閉じる ×
ビジネス
日本製鉄のUSスチール買収問題

日本製鉄・橋本英二会長が狙う「USスチール買収」の“ウルトラC”とは? 有力シナリオは国を代表する企業に出資した前例“BNA方式”の発展型か

日本製鉄はトランプ大統領との”直接交渉”にどう臨むのか(時事通信フォト)

日本製鉄はトランプ大統領との”直接交渉”にどう臨むのか(時事通信フォト)

USスチールは工場を出資、日鉄が資金と技術を提供

 手法の長所や短所がわかっていれば、そこに足し算や引き算をすることで、トランプ氏のさまざまな要求にアジャストしやすい。急場に持ち込む上で好都合にちがいない。

 改めて今回の買収で見れば、USスチールは工場などを現物出資し、日鉄は資金と技術・ノウハウを提供するかたちで「新・USスチール」を設立する。ただし、資産のすべてを新会社に移してしまえば、元のUSスチールは「もぬけの空」になり、潜脱的な買収だ、という批判を誘発しかねない。

 そこで設備投資によるメリットが見えやすい工場など優先順位が高い部門に絞ってまずは新会社に移して日鉄も50%前後で資本参加。その後、業績向上が見えてくれば、トランプ政権や労働組合への理解を得ながら日鉄の議決権の割合を高めていく方向性も見えてくるかもしれない。過去の知見と、“小さく生んで大きく育てる”考え方との合わせ技である。

 100%でないにせよ、技術の流出リスクなどを考慮すれば、日鉄は少なくとも経営の主導権を握る51%以上の株主になることが不可欠の条件と考えているのではないかと推測される。

 そのために、まずはUSスチールに過半数以下で資本参加しながら、日鉄が経営の主導権を確保するやり方が考えられる。出資する普通株式の割合は4割にとどめつつ、買収にあてるつもりだった資金の一部を株主総会における議決権のない種類株として引き受けておく。その上で、業績の向上など一定の条件が整ったところで種類株を普通株に転換。これが1割以上あれば、過半数を確保できる。

次のページ:信頼関係のある企業に「資本参加」してもらう

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。