文科省の将来推計が突き付けた2つの限界点
文科省の将来推計は、2040年について都道府県別の分析も試みているが、若者が多く、人気大学が集まっている東京都も定員充足率が79.1%にまで落ち込み、状況の厳しさという意味ではさして変わりない。大阪府は75.3%、京都府が72.1%といずれも8割を下回る。地方圏においては5割台となる県がいくつも登場する。
東京都の詳細に見てみると、国立大学の定員充足率は81.8%、公立大学が80.1%、私立大学が78.9%と、2割近く埋まらなくなる見込みだ。前編記事で、国公立大学の定員割れを「時間の問題」と先述したが、こうした見立てを裏付けるに十分な推計値となっている。
文科省の新たな将来推計は、2つの限界点を突き付けている。1つは、進学率が頭打ちとなるという見通しである。もう1つは、留学生数が伸びる以上に日本人の18歳人口が減るという点だ。
これまで各大学は、進学率の向上と留学生の受け入れ拡大によって18歳人口の減少によるマーケットの縮小を少しでも凌ごうとしてきたが、「こうした手法はもう通用しない」と言っているのに等しい。
「大学じまい」の具体策とは
国公立を含むすべての大学が、経営モデルの根本的な変革と、それができないところは市場から退場を求められる段階に入ってきたことを認識する必要があるだろう。
「大学じまい」の具体策については、中教審の特別部会が検討を進めてきた。2月21日にまとめられた答申は及び腰の部分も残ってはいるが、規模の縮小に踏み込んだ内容となった。
すでに厳しい経営環境にある私立大学について再編・統合、縮小、撤退の支援といった規模適正化の推進をうたうことはもとより、国公立大学についても鋭く迫っている。
国立大学に対しては「連携、再編・統合等による基盤強化」に言及。公立大学に関しては定員規模の見直しだけでなく、地方自治体などに私立大学の安易な公立化を回避するようくぎを刺したのだ。
全体としては質を高めて規模縮小したり、学内資源を学部から大学院へシフトしたりするよう促している。これ以上の乱立を防ぐために大学設置認可の要件を厳格化する方針も示している。
文科省が「大学じまい」に大きく舵を切ったことは時代の趨勢だが、そのタイミングはあまりに遅すぎた。18歳人口が減ることが分かっていた中で大学数や学部数の増加を許してきたことが、これで帳消しになるわけではない。