優先順位をつけることも大切(イメージ)
「減らないタスクに増え続けるプロジェクト」「頑張っても認められない閉塞感」──会社や組織には、こうしたネガティブな問題がつきものだ。そうした問題の根本解決が難しい原因は“人”にあるのではなく、人や組織に染み付いた“思い込み”にあるからだという。
自身のマネジメント理論を産業界や行政改革で実践し、世界的に評価されてきたゴールドラットジャパンCEOの岸良裕司氏は、人や組織に寄生する“思い込み”を“害虫”と呼ぶ。害虫の一種である「マルチタスク虫」は上司に寄生し、「仕事の優先順位がつけられず、部下への無茶振りが多い“ダメな上司”」を生んでしまう虫。厄介な「マルチタスク虫」の駆除は、一体どうしたらいいのか。
岸良裕司氏の著書『組織をダメにするのは誰か? 職場の問題解決入門』(クロスメディア・パブリッシング)より、一部抜粋して再構成。【全4回の第1回】
ダメ上司のもたらす深刻なダメージ
「一生懸命頑張ったのに、今日、何を完了できたんだろう……」
こんな思いを抱く人がいたら、その職場には「マルチタスク虫」がまん延している可能性がある。
「マルチタスク虫」のダメージは深刻だ。あれもこれも最優先で、現場は集中して仕事ができない。必然的に仕事の質が下がる。すると、手戻り・手直しが常態化し、ムダな飛び込みタスクが増え続ける。こなさなければいけない仕事は増えるばかりで、納期遅れも頻発する。
遅れを取り戻すために残業も増える。当然ながら、従業員満足度(ES)も下がり、退職者も増え、残ったメンバーのプレッシャーもきつくなり、メンタルを病む人も増えてくる。
マルチタスク虫の増殖が加速する原因は主に、優先順位を付けられないダメ上司だ。
「顧客第一」という、正論すぎて部下が反論する余地がないスローガンのもと、「すべてのタスクを最優先せよ」と言うかのごとくプレッシャーをかけてくる。
その一方で、何もかも丸投げし、現場は疲弊し続ける。頑張っても、頑張っても成果がでない。だから、業績もどんどん下がる。
「すべて最優先」という暗黙のプレッシャーの中で様々なタスクが降ってくると現場はどうなるだろうか?
仕事の大小にかかわらず様々なタスクが現場に放り込まれると、“フン詰まり”状態になる。こんな状態でケツを叩いて仕事の流れを加速しようとしても、フンは排出されるどころか詰まるばかりである。