風光明媚な糸島の海
札幌ではなく福岡が選ばれる理由
それはさておき、福岡発にすると、その後の旅のプランが立てやすくなるんですよね。7日間有効のパスであれば、京都と東京の間で名古屋か金沢・富山泊も考慮に入れられます。となれば、東京へ向かう日、名古屋泊であれば浜松で下車して鰻を食べたり、金沢・富山泊であれば長野・松本にも寄ることができる。
東京に着く頃にはジャパン・レール・パスの7日間の有効期限が切れるかもしれませんが、あとは東京と周辺県を楽しめばいい。母国に帰るにあたっては、羽田空港か成田空港を使えばいいのです。
「端っこからがいいのなら、札幌でもいいんじゃないですか?」と運転手に聞いたら、札幌には新幹線がないため福岡が選ばれると言っていました。新幹線始発の新函館北斗駅までは札幌駅から特急で3時間30分以上。これがネックとなるほか、そこから先の東北・北関東に広島・大阪・京都に匹敵する、メジャーな観光地が少なく、あったとしてもアクセスがよくないのだとか。
福岡が日本旅行の起点に選ばれるのには、もう一つ大きな理由があります。韓国の仁川空港が東アジアのハブ空港になっているため、欧米からの多くの飛行機が仁川に着きます。そこから福岡空港は1時間20分ほど。私も経験あるのですが、直行便にするよりも仁川経由にしたほうが飛行機のチケット代が安くなることも多いんですよ。もちろん欧米各国から「福岡直行便」の数が多いわけでもない。そして福岡に行くのであれば成田や羽田経由よりも仁川経由の方が利便性が高い。
あとは温泉ブームと焼酎ブームもあり、福岡発で九州の各県を周るプランも人気だそうです。長崎新幹線も開通したので、九州旅行の選択肢も各段に広がりました。そうしたことから欧米系の観光客は福岡を目指すのだそうです。タクシー運転手の話は示唆に富んでいて、そこからインバウンドビジネスのヒントなんかも見つかるかもしれませんね。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は倉田真由美氏との共著『非国民と呼ばれても コロナ騒動の正体』(大洋図書)。