「益出し」「損出し」の想定額にも影響
なぜこのようなことになるのでしょうか。それは、特定口座の損益計算は、「同日内の売買は買いを先にカウントし、取得単価を平均化する」ルールが適用されるためです。このため、短期的な売買を繰り返すと、本来の売買順序とは異なる損益計算になる可能性があります。
このルールは、年末の「益出し」「損出し」にも影響します。例えば、過去の損失を相殺するために含み益のある株を売却し、すぐに買い戻した場合、取得単価が変わることで想定と異なる利益が計算され、節税効果が薄れる可能性があります。
また、損切りルールを「購入価格の10%下落」と決めている人も注意が必要です。証券会社の取引履歴に表示される取得単価は実際の購入価格とは異なるため、別途記録を残すことをおすすめします。
特定口座のルールを理解し、意図しない損益計算のズレを防ぐためには、
【1】売却と買い直しを翌日以降にずらす(別日扱いになるため、取得単価の変更を回避できる)
【2】一般口座を活用する(ただし確定申告が必要)
【3】売買後の取得単価を確認し、想定通りの計算になっているかチェックする
といった方法が必要です。
特定口座は確定申告不要で便利ですが、売買ルールの影響を受けやすい点に注意が必要です。株の買い直しを考える際は、計算ルールを理解した上で慎重に取引しましょう。
今回のまとめ
・特定口座での同日売買は、「売る→買う」でも「買う→売る」で計算される
・節税効果を意識した「益出し」や「損出し」は取得単価の変動に注意
・自分が買った株価、売った株価を別途記録を残そう
【プロフィール】
藤川里絵(ふじかわ・りえ)/個人投資家・株式投資講師・CFPファイナンシャルプランナー。2010年より株式投資をはじめ、主に四季報を使った投資方法で、5年で自己資金を10倍に増やす。普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため活動し、DMMオンラインサロン「藤川里絵の楽しい投資生活」を主宰。本稿の関連動画がYouTubeにて公開中。
個人投資家で株式投資講師・藤川里絵さん