特定口座で同日に売買する際に気をつけておくべきことは?
株を損切りしたあと、再び同じ日に買い直したとき、平均取得単価が思った金額ではなかったという経験はないだろうか。特定口座の取引では、こういった落とし穴があり、年末での「損出し」をおこなう際などに注意が必要だ。『世界一楽しい!会社四季報の読み方』などの著書がある個人投資家で株式投資講師・藤川里絵さんが解説するシリーズ「さあ、投資を始めよう!」。第131回は、「特定口座の落とし穴」について。
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株式投資では、一度売却した株を同じ日に買い直すことがあります。例えば「売却後に株価が下がったので安く買い直した」「反発したので再び上昇を期待して買い直した」などのケースです。しかし、特定口座(源泉徴収あり)でこの取引を行うと、思わぬ計算ルールに引っかかることがあります。
「買いが先に行われた」とみなされるルール
株を売って買い直したとき、投資家の多くは「売却時点で損益が確定し、その後の買い直しは独立した取引」と考えがちです。しかし、特定口座(源泉徴収あり)では、同一日に同じ銘柄の売買を行うと、「買いが先に行われた」とみなされるという独自ルールがあります。このため、想定していた損益計算と異なる結果になることがあります。
例えば、次のような取引をしたとします。
【1】1株1000円で100株を購入
【2】その後、800円で100株売却(▲200円の損失×100株=▲2万円の損失)
【3】さらに、820円で100株を買い直し(新たな取得単価は820円)
この場合、多くの投資家は直感的に、「売却損益:(800円-1000円)×100株 = ▲2万円(損失)」「買い直した株の取得単価:820円」と考えます。
ところが実際は、特定口座では「買い直しが先に行われた」とみなされるため、計算方法が変わります。新たな取得単価は、「(1000円+820円)÷2 = 910円」となります。
つまり、買い直し後の株の取得単価は820円ではなく910円になり、売却損益も次のように変わります。
「売却損益:(800円-910円)×100株=▲1.1万円(損失)」
このように、売却時点では本来2万円の損失だったはずが、実際には1.1万円の損失として計算されるため、投資家が想定していた損失とズレが生じます。