破談について語った日産自動車の内田誠・社長(2月13日/時事通信フォト)
2月13日、ホンダと日産の経営統合交渉の破談が正式に決まった。日産の内田誠社長は同日の記者会見で新たな提携先を求める方針を明らかにし、今後“誰が日産を買収するのか”という点への注目度も高まっているが、そもそも“世紀の統合”はなぜ破談になったのか。自動車業界に精通するジャーナリスト・井上久男氏がレポートする。【全3回の第2回】
あえて無理難題を押し付けた?
では、誰が日産を買収するのか──次に向けた展開では、テスラ以外も水面下で非公式に動いている。その動きを説明する前に、改めて破談の経緯について解説していく。
「ワンガバナンスを目指した提案をしたが、合意点を見いだせなかった」
2月13日にホンダの三部敏宏社長はオンラインで記者会見し、こう説明した。ワンガバナンスとは、共同持ち株会社による経営統合ではなく、ホンダが日産を完全子会社化することを意味する。
経営統合交渉入りの際には、共同持ち株会社を設立し、その下に事業会社として日産とホンダがぶら下がる計画が発表された。持ち株会社の社長と取締役の過半数はホンダが指名することが決まっていたため、ホンダ主導であることは明白だったが、日産には役員の人事権などで裁量が与えられるため、一定の経営の独立性は担保されていた。
しかし、完全子会社となれば、すべてホンダの戦略下に置かれることになる。たとえるなら、両社はトヨタ自動車と子会社のダイハツ工業のような関係になるわけだ。ダイハツは、トヨタの小型車戦略の中に位置づけられ、社長はトヨタから送り込まれている。
これに日産が猛反発し、内田氏は会見で「子会社化により日産の強みを最大化するのは難しいと判断した」などと語った。経営の自主性にこだわったようだ。
この破談の理由について「ホンダは日産が受け入れられない無理難題を押し付けた感がある」と関係者は明かす。ホンダは1月14日の週に持ち株会社の新社名案を「ホンダコーポレーション」として提示後、矢継ぎ早に子会社案を示したという。