森永卓郎さん自身、必要なお金を確保したからこそ、仕事を自由に選べるようになったという
1年3か月にわたるがん闘病の末、1月28日に逝去した経済アナリストの森永卓郎さん(享年67)。生前、数々の著書を上梓した森永さんだが、未発表の原稿があった。
本誌・週刊ポストが入手したその遺稿には、お金と仕事に対する深い洞察が綴られていた。本記事では、森永さんが書き遺した「貯蓄の意味」を紹介する。
3年分の生活費を確保して「どうでもいい仕事」を整理
森永さんは家族や周りの人から「ケチ」「セコい」と言われ続けてきた。だがそれは、「お金に縛られる人生を避けるため」だったと振り返る。
「私はお金が好きで、もっとお金が欲しいからお金を貯めてきたのではない。自分の自由を守るためにお金を貯めてきたのだ。もちろん、そうだからこそ、無限にお金を貯める必要などない。
世の富裕層は、『お金中毒』にかかっていることが多い。10億円持っていたら、それを翌年20億円にしようとする。20億円を手に入れたら、それを100億円に、100億円持ったら、今度はそれを1000億円にしようとする。お金中毒の人たちは、使うあてのないレベルまで、お金を増やそうとするのだ」
では、どれくらいお金があればいいのか。目安となるのは、“生活費の3年分”を確保することだという。
「何かあって収入が途絶えたとき、3年分の生活が保証されていれば安心だからだ。3年あれば、その間に別の仕事を探したり、別の場所に引っ越したりして、新しい暮らしを始めることができる。そうした『緩衝材』としての役割を果たすのが貯金なのだと、私は考えている」
ポイントは収入ではなく生活費の3年分であることだ。年間100万円の支出で済む人は、300万円を貯めればいいということになる。
必要な貯蓄を確保したらどうすべきか。森永さんは、「その後は、やりたくないほうから順番に、『カネを稼ぐための仕事』を切り捨てていけばよい」と綴る。
「ある程度のお金を持っていて、当面の暮らしに不安がなければ、辞表を叩きつけるという選択肢を持つことができる」