クレーマー化する社員にどう対応するのが正解なのか(写真:イメージマート)
職場でのパワーハラスメント防止措置が2022年4月からすべての事業者に義務化され、労働環境の整備が進められている。一方で過剰に権利を主張するなどして、クレーマー化する社員の存在に悩まされる会社も少なくないようだ。
会社の不備ばかりを訴える、労働法の誤った解釈で社労士を糾弾する――こうした“問題社員”の要求に対し、経営者はどのように対応すべきなのか。労働問題、カスハラ対策などに詳しい弁護士・島田直行氏が、そのポイントを解説する。島田氏の著書『知識ゼロからの問題社員のトラブル解決 円満退職のすすめ方』(幻冬舎)より、一部抜粋して再構成。【全3回の第2回】
ネットの知識で社労士を質問攻めに
【事例紹介】
製造業を営むA社では、前職の経験をふまえ、即戦力として当該社員を採用しました。しかし、その数ヵ月後にはわずかな会社の不備を挙げては「労基署に申し入れる」「上司からの指導はパワハラ」「精神的な苦痛を受けた」と会社を批判するようになりました。
社員が会社に改善を求めていくこと自体は、労働者の権利を守るのみならず、よりよい職場をつくるために必要なことでしょう。経営者としては、一蹴するのではなく真摯に耳を傾けるべきです。
ですが実際の現場では、明らかに労働法の解釈を間違っているのにもかかわらず会社を攻撃するひとをみかけるようになりました。
紹介事例では、会社の顧問社会保険労務士(社労士)が面談することにしました。すると問題社員である彼女は、ネットの知識で社労士を質問攻めにします。答えられないと、「こんなこともわからないのに社労士ですか」と社労士を追い込みました。
そこで私が対応することになりました。私が「即答できません。調べて回答します」と言うと、彼女は「それでも会社の弁護士ですか」と畳みかけてきました。
そこで私は「そうですね。知識不足で申し訳ありません。だから質問を書面でいただければ調べて回答します。それに何か不都合でもありますか」とだけ回答して議論に持ち込みませんでした。
ファイティングポーズをとっていた彼女にしてみれば、肩透かしです。これでいったん話を終わらせ、退職勧奨のステップに移行させました。