便利なキャッシュレス決済に潜む落とし穴とは(写真:イメージマート)
スーパーやコンビニだけでなく、昔ながらの商店街や自動販売機、駐車場や駐輪場の料金支払いまで、1円も現金を持っていなくとも過ごすことができる「キャッシュレス」はいまや年代を問わず生活に浸透した。しかし、便利さと引き換えに失うものはないだろうか。物価高のいま、家計を苦しめている“真犯人”こそキャッシュレスかもしれない。【キャッシュレス決済の落とし穴・前後編の前編】
重くてかさばる現金は持ち歩かずに、会計時はカードやスマホを差し込むだけ、かざすだけ。ラクでスマート、しかもポイントも貯まっておトクな「キャッシュレス決済」の利用者は年々増加中だ。
政府も消費の活性化などを見込んだ経済成長戦略の一環として、今年のうちにキャッシュレス決済利用率を40%に引き上げる目標を掲げている。だが、その便利さの代償はあまりにも大きい。知らずに使い続けていると、気づかぬうちに大損しているかもしれない。
一度使うだけで詐欺を呼び寄せる
『節約を楽しむ』などの著書がある、作家の林望さんが指摘する。
「他国とは違い、日本には偽札はそうそうありません。まさに、紙幣のクオリティーは世界一。国がこれほど高品質な紙幣をつくって流通させているのに、わざわざ海外のマネをして、キャッシュレスなどというリスクの高い決済方法に乗り換える必要はありません」
もっとも典型的なリスクは、クレジットカードの不正利用だ。林さんも被害経験があるという。
「クレジットカードは、まれに大きな買い物をする際か、愛用しているオンライン古書店での買い物にしか利用していません。ところが以前、明細に身に覚えのない数十万円の引き落としがあったのです。金額が大きかったためにすぐに利用停止することができましたが、気づけないほど少額ずつ使われていたら、見過ごしていたに違いありません。
このようにインターネット上でハッキングされるリスクのほか、飲食店や百貨店などでは目の前で決済せず、カードを店員に預ける場合も多い。このとき、裏で絶対に悪事を働かれていない保証はどこにもないのです」(林さん)
パターンはより巧妙化しており、近年増えているのが、クレジットカード情報を登録したショッピングサイトなどから電話番号やメールアドレスが流出し、実在するカード会社や銀行を騙った詐欺グループから「カードの不正利用があったので、確認のためにカード番号を入力してほしい」「過剰支払いがあったので返金のために口座番号を教えてほしい」といった連絡がくるケースだ。
ショッピングサイトや運送会社、電力会社を装って「利用料金の未払いがあるのでいますぐ振り込んでください」と、危機感を煽る文面につられ、みすみす大金を振り込んでしまった事例も少なくない。