いま中国株が上昇しているのはなぜか(Getty Images)
香港市場において大規模な資金流入が起きている。香港メインボードにおける1月の1日当たり平均売買代金は1438億香港ドルであったが、2月は倍増の2972億香港ドルとなった。3月に入っても活発な商いが続いており10日現在、3154億香港ドルと2月を上回る水準だ。
旺盛な買いに支えられて株価は上昇している。ベンチマークとなるハンセン指数の動きをみると、3月10日の終値は1月の最終取引日(28日)と比べ18%上昇している。一方、NYダウ、NASDAQ、日経225は同じ条件で計算すると、いずれも下落、その下落幅は順に7%、11%、5%だ。
10-12月期における中国の実質経済成長率は前年同期比5.4%、前期比1.6%で、表面上は堅調だ。しかし、2024年の固定資産投資(名目値、以下同様)の伸びは3.2%に留まっており、全国不動産開発投資は10.6%減、商品不動産販売面積は12.9%減、2024年末の商品不動産在庫面積は10.6%増で、不動産不況は依然として深刻である。2月の生産者物価指数はマイナス2.2%で、2022年10月以来29か月連続で下落、消費者物価指数はマイナス0.7%で2024年1月以来13か月ぶりの下落となるなど、需要不足は明らかだ。
外部環境をみると、トランプ大統領は3日、中国からの輸入品に対して新たに10%の追加関税をかける大統領令にサインした。2月4日から10%の追加関税がかけられており、上乗せされる関税率は20%だ。中国側は米国産の石炭、LNG、農産物に対して最大15%の追加関税を課したり、一部のレアメタルについて輸出制限を行ったりしている。米中貿易摩擦は激化しており、今後、輸出の鈍化が懸念される状況だ。
DeepSeek登場を機に猛スピードでAIの社会実装が進む
悲観材料が多い中、なぜ中国株は上昇するのか。それは足元の悪材料を打ち消して余りある好材料が複数あるからだ。
中国企業の深度求索(未上場)は1月20日、数学、コーディング、推論など複数のベンチマークテストで、OpenAIのChatGPT-4oに匹敵する性能を持つDeepSeek-R1を公開。1月26日には米国アップルストアでダウンロード数が無料アプリ部門トップになるほどの人気となり、それが1月27日のNVIDIA、ナスダック総合株価指数の急落につながった。いわゆる、「DeepSeekショック」である。