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投資
伝説のプログラマーが説く「メタトレンド投資」の極意

「少し出遅れてもまったく問題ない」2014年にエヌビディアに投資した“伝説のプログラマー”中島聡氏が説く「メタトレンド投資」の大きな強み

元マイクロソフトのプログラマーで、さまざまなソフトウェア開発をおこなう傍ら、投資家としても活躍する中島聡氏(写真:徳間書店提供)

元マイクロソフトのプログラマーで、さまざまなソフトウェア開発をおこなう傍ら、投資家としても活躍する中島聡氏(写真:徳間書店提供)

「AI時代が来る」と世間が騒ぎだした後からでも、NVIDIA(エヌビディア)株には大きな上昇余地が残っていた――。これは一夜にして社会が変わるのではなく、10年、20年単位で徐々に浸透する「メタトレンド」の特徴によるものだと分析するのは、元マイクロソフトの“伝説のプログラマー”で2014年にNVIDIAに投資した中島聡氏だ。中島氏が説く「メタトレンド投資」とはどのようなものか。中島氏の新著『メタトレンド投資 10倍株・100倍株の見つけ方』(徳間書店)から一部抜粋・再構成して紹介する。

「メタトレンド投資」と「短期投資」の相性は悪い

 メタトレンドは10年、あるいは20年という長いスパンで、ゆっくりと産業構造や人々のライフスタイルを塗り替えていく大きな流れです。

 iPhone が初めて登場したのは2007年のことでした。そこからiPhone をはじめとするスマートフォンが我々の日常に溶け込み、そして誰もが当たり前に使う存在になるまでには10年以上の年月がかかりました。この事実から見ても、ガラケーからスマホのように、ライフスタイルを一気に変えてしまうようなメタトレンドは、10年単位の時間を要するのです。

 それでもスマホの普及スピードは比較的速い部類に入ります。なぜなら、携帯電話は大体3年ほどで買い替える人が多く、他の耐久財よりも更新サイクルが短いからです。これと比べると、EVや自動運転などのメタトレンドには、さらに長い時間がかかるでしょう。「EVの時代」「EVシフト」という言葉が広く知られるようになって久しいにもかかわらず、ガソリン車やハイブリッド車を主力とするトヨタ自動車は今なお世界最高水準の売上を維持しています。

 Tesla やBYD といったEVメーカーが業績や株価を伸ばしている一方、なぜトヨタが依然として強いのか。その理由のひとつは、自動車の買い替えサイクルが一般的に5~10年と長く、EVや自動運転が社会に根付くまでにスマホ以上の長い時間が必要だからです。

 こうした特徴から、メタトレンド投資には「10年単位で腰を据える」という長期的な姿勢が求められます。

「1年以内に利益を出したい」といった短期志向で、目先の利益を追う投資スタイルとは、残念ながら相性がよくありません。

 たとえば「空売り」という投資手法があります。これは「株価が下がることに賭ける」投資方法です。まず証券会社から株を借りて売却し、値下がり後に買い戻す。最初に高く売って、あとで安く買い戻した差額が利益となるわけです。

 もし「これからはEVが未来を制する」というメタトレンドに乗ろうとし、「EV開発に本腰を入れていないトヨタはもう終わりだ」と思って短期的に空売りを仕掛けた場合どうなるでしょうか。

 現時点ではガソリン車やハイブリッド車にまだ十分な需要がありますし、この需要は向こう数年単位で維持し続けるでしょう。つまり、トヨタの株価はすぐには下がらず、空売りは裏目に出てしまう可能性が高いのです。

 長期的な視点で見れば、Tesla などのEVメーカーが勢力を拡大し、いつかはトヨタを世界王者の座から引きずり下ろす未来が訪れるかもしれません。しかし、それは10年、20年先の話であり、短期間で実現すると期待し、行動に移すのはリスクが大きすぎます。

 メタトレンドを理解していても、短期的な利益を追う戦略は危険だということです。

 世界ナンバー1のEVメーカーであり、EV分野で現時点の代表選手であるTesla ですが、長期的には株価が大きく上昇しているものの、ここ3年ほどは株価が大きく上下しています。

 そのまま保有し続ければメタトレンドに乗り、株価が上がっていく可能性は高いでしょうが、すぐに売ってしまうと思わぬ高値つかみや損失を招くかもしれません。やはり、メタトレンド投資で短期的な判断をすると裏目に出てしまう可能性が高いのです。

 要するに、メタトレンド投資と短期投資は水と油の関係にあります。メタトレンドは長期的な視野でこそ、その真価を発揮します。短期間で確実な利益を求める考え方とは、根本的に合わないのです。

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