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投資
伝説のプログラマーが説く「メタトレンド投資」の極意

「少し出遅れてもまったく問題ない」2014年にエヌビディアに投資した“伝説のプログラマー”中島聡氏が説く「メタトレンド投資」の大きな強み

メタトレンド投資が誇る「安定感」と「余裕」

 あえてメタトレンド投資の弱点を挙げるなら「個別銘柄を正確に見極めるのが難しい」という点です。

 いくらメタトレンドという大きな流れをとらえていても「具体的にどの企業が業績を伸ばし、株価を上げるのか」をピタリと当てるのは簡単なことではありません。

 例えば、EVは今後間違いなく進んでいくメタトレンドのひとつです。ガソリン車からEVへとシフトしていく動きは、徐々にですが世界各国の環境政策や消費者意識の変化によって後押しされています。

 ただし、EVが確実に訪れるメタトレンドだとわかっていても、具体的な勝ち組をピタリと当てるのは別の問題です。これから先もTesla が業界のトップを走り続けるのか。それともRivian(リヴィアン)、Lucid(ルーシッド)といった新興EVメーカーが台頭するのか。

 あるいは中国発のBYD がTesla を追い抜いてしまうのか。どの企業がEVというメタトレンドの主役になるか、2025年現在においても、その答えをはっきりと示すことはできません。
 
 とはいえ、この弱点はメタトレンド投資の「業界全体が押し上げられる」という強みによって、ある程度カバーできます。

 メタトレンドは長期的なうねりを起こすため、特定の1社ではなく、業界全体を底上げします。そのため、仮に「一番の本命銘柄」を逃してしまったとしても、同じ業界内の別の銘柄に投資していれば、十分なリターンを得るチャンスが残されています。

 例えば、EVというメタトレンドを早い段階でつかみ、Tesla ではなく、BYD に投資していた人がいたとします。BYD もEVというメタトレンドによって株価はこの5年で約46香港ドルから約300香港ドル台まで6倍以上に急騰。Tesla ほどの爆発的な値上がりではなくとも、わずか5年で資産を6倍以上に増やすことができたのです。

 同じことは半導体業界でも言えます。もしNVIDIA を買いそびれたとしても、同じ半導体分野でGPUやCPUを製造するAMD に投資していたなら約5倍上昇しています。

 こうした業界全体が伸びることで、個別銘柄選びで多少の見込み違いがあっても、損失を回避しやすくなります。それどころか、たとえ本命の銘柄を外してしまっても、次点やその他の有望企業を選ぶことができれば、十分大きなリターンを得ることができたのです。

 これがメタトレンド投資が誇り、そして他の投資手法にはない「安定感」と「余裕」です。

 もっとも、「メタトレンド投資なら、絶対に損をしない」などという甘い話ではありません。企業の最低限の「見極め」は必要不可欠です。たとえ「AIの時代が到来し、GPUがその鍵を握る」というメタトレンドを正しくとらえていたとしても、どの半導体メーカーに投資しても大きなリターンを得られたわけではありません。

 2014年当時、半導体業界の巨人であったIntel は、CPU市場では圧倒的な存在感を示していましたが、AI向けGPU市場への本格参入に出遅れました。結果論ではありますが、もし私がNVIDIA ではなくIntel に投資し、現在まで保有していたら株価は下落し、損失を被こうむっていたことになります。

 このように、メタトレンド投資は「大局をつかむ」だけでは不十分で、そのうえで「どの企業がメタトレンドに上手く乗り、そして業績を伸ばしていくか」を見極める必要があります。

※中島聡・著『メタトレンド投資 10倍株・100倍株の見つけ方』(徳間書店)より一部抜粋・再構成

【プロフィール】
中島聡(なかじま・さとし)/1960年北海道生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了。マイクロソフトでソフトウェア・アーキテクトとしてWindows95などの基本設計を手がける。2000年にXevo(旧UIEvolution)を創業。2019年に同社を3億2000万ドルで売却。現在はさまざまなソフトウェア開発を行っている。

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