バンス副大統領(Getty Images)
副大統領のバンス氏はMAGA派の象徴的な存在で、マスク氏との火種はすでにいくつもある。
「政権発足前にマスク氏らが高度な技術を持つ外国人向けのビザ発給拡大を求めたのに対し、MAGA派の議員や支持者らのグループは『米国の労働市場に悪影響を与える』と猛反発。トランプ氏がマスク氏側の声を採用し、マスク氏の影響力が厳然たるものとなった経緯がある」(中岡氏)
トランプ氏同様、奇抜な言動が目立つマスク氏だけに、「政権発足当初は、2人がすぐにケンカ別れしてマスク氏が政権を去るだろうと見られていた」(外務省関係者)というが、風向きは変わってきたようだ。
いざ政権が船出してみると、他の閣僚らと比べてマスク氏の力の大きさが目立っているという。前出・浜田氏が言う。
「テスラやスペースXの事業で各国に工場や生産拠点を持つビジネスマンであるマスク氏は、トランプ氏の苦手とする対外的な関係構築に長けています。米国から技術と資本を呼び込みたいと考える(マスク氏の出身国の)南アフリカやグローバルサウスの国々が、なんとかマスク氏に食い込もうとする動きも出てきた。マスク氏は『各国にどんなディールを仕掛ければ米国にとって最大の利益になるのか』をトランプ氏にアドバイスできる立場になっているのです」
つまり、複数グループの集合体が支えていたトランプ政権のパワーバランスが崩れる懸念とも言えよう。その先にはマスク氏が主導する“粛清”さえも危惧されている。
浜田氏が続ける。
「ルビオ氏やバンス氏は“トランプ氏の忠実な手下”のような存在ですが、マスク氏は対等に近いパートナーになってきた。トランプ氏の別荘『マール・ア・ラゴ』に行ったり、ファミリーと食事したり写真を撮ったりする頻度も、ルビオ氏やバンス氏より多い。他の側近との対立がさらに深まった際に、マスク氏が“ルビオやバンスは追放しよう”とトランプ氏に進言して、相手を気に入るのも見限るのも早いトランプ氏が応じるシナリオもあり得るでしょう」
それだけならトランプ政権の内紛という話で済むが、政権の動向は米国経済、世界経済を左右するから問題は厄介だ。
■後編記事《【トランプショックの行方】“大暴落”の引き金はマスク氏のDOGE改革か 米国の保護主義加速で株式市場にも大打撃、関税引き上げ&円高進行で「日経平均3万円割れ」の予測も》に続く
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※週刊ポスト2025年3月28日・4月4日号