日本は「トランプ2.0」の世界とどう向き合うべきか(CNP/時事通信フォト)
“トランプ関税”により、日本も鉄鋼や自動車などが脅威にさらされている。ヨーロッパや中国などの報復関税も動き出し、大国同士が睨み合う情勢下だが、「日本政府や企業は巻き添えに備えるだけでなく、攻めることも必要」と指摘するのは、かつて通商産業省(現・経済産業省)で国際経済を担当し米州課長も務めた明星大学教授の細川昌彦氏だ。日本は「トランプ2.0」の世界とどう向き合うべきか――細川氏が見通しを語った。
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経済を武器に“脅し”をかけるトランプ外交によって「どんな受難が待ち受けているか」と心配している人は少なくないと思います。相次いで繰り出される追加関税は「予測不能」とも言われますが、実は、行動原理を理解する手がかりはあって、それは2016~2020年のトランプ第1期政権の経験です。
貿易戦争をめぐって「喧嘩をしやすい相手」である隣国のカナダ・メキシコから喧嘩をふっかける、という手順しかり、価値観に無関心で実利重視で方向転換するスタンスしかり、トランプ大統領は第1期と同じパターンを踏襲しています。こうしたトランプ流の本質について、私は今月上梓した拙著『トランプ2.0 米中新冷戦』(日経BP刊)で詳述していますが、第1期で“苦い経験”を喫した習近平氏の中国もやはりこうした点を実によく研究して動いています。
2018年に始まった米中の関税合戦を振り返ってみると、当時は両国の読み違えも重なって応酬がエスカレートしました。経済の体力勝負になって打つ弾が先に尽きた中国は手詰まりに陥りました。
とりわけトランプが関税にとどまらず、華為技術(ファーウェイ)に対する「輸出規制」にまで踏み出したことは中国政府には衝撃を持って受け止められた。その反省からトランプ大統領再来に備え始めた中国は、米国のやり口を真似る“コピー戦術”で武器を磨いています。その一つが輸出管理法の制定とそれに基づく近年のレアアースの輸出規制です。こうした米中の応酬には日本も巻き込まれる可能性が高い。