アジア諸国にEU、グローバルサウス…日本はどう連合すべきか
こうした戦略は応用可能です。今、巨大市場を背景として米中両大国が経済の囲い込みをして、自由貿易が損なわれることに危機意識を持っているのは豪・韓・欧州だけでなく、東南アジアや南米などグローバルサウスと呼ばれる地域の国々も同じです。
トランプ大統領の無関心ゆえに「力の空白地帯」となったグローバルサウスに対して中国が影響力を強めつつあり、日本にも揺さぶりをかけてくるに違いありません。そんな日本の進路を考えるとき、自らの強みを考えてみましょう。
自虐的な日本人は気づいていませんが、日本には「信頼できる調整役」という評価がある。アメリカが環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱した後、日本の調整の下、アメリカ抜きの協定(CPTPP)をまとめたことも財産です。
こうした財産を活かし、中国はもちろん、アメリカからも自律したかたちで経済安全保障を求める国々の結節点になればいい。近年、「戦略的自律」を掲げるヨーロッパと手を携え、グローバルサウスとの調整役も日本が担う。そんな「自律連合」を打ち出す時ではないでしょうか。
軍事面で日米同盟が基軸であることにかわりはありませんが、“トランプ大統領の機嫌を損ねてはいけない”とばかりに経済面で引きこもるばかりでは国益を損ねます。
トランプ大統領の風圧に晒されるヨーロッパの立ち位置に日本があえて踏み出す必要はありませんが、他のアメリカの友好国の様子を観察しつつ、これらの国々がWTO提訴に出た際には、日本も動くべきです。日本は米中に対してWTO提訴に踏み出せないでいますが、「ルール重視」の旗を掲げながらここで動かなければ、言葉倒れとなって信頼を失う。岐路にさしかかる中、外交の微妙な“さじ加減”が必要になって来ています。(了)
■聞き手・構成/広野真嗣(ノンフィクション作家)
細川昌彦(ほそかわ・まさひこ)/1955年生まれ。明星大学経営学部教授。1977年、通産省に入省。米州課長だった1998年には当時の与謝野馨大臣を補佐して鉄鋼摩擦の相手であるアメリカ側との折衝にあたった。貿易管理部長、中部経済産業局長、スタンフォード大学客員研究員、ジェトロNYセンター所長などを歴任。2009~2020年、 中部大学特任教授、2020年9月より現職。新刊に『トランプ2.0 米中新冷戦』(日経BP刊)がある。