普通に考えれば、本業のスクラップ業で億を超える負債を返済するには途方もない時間がかかるだろう。告発された直後は磯貝氏も、「FXで作った借りはFXで返す!」と息巻いていた。その頃には資産のほとんどが差し押さえられていたが、まだ確定していなかった罰金を払うために5000万円の現金が差し押さえを免れていた。磯貝氏はその「罰金用」の5000万円を元手に、得意のFX取引に挑んだ。毎月末にその月の収支計算をして、毎月100万円の返済を目標に利益を納税していった。
しかしまもなくして罰金刑が3500万円に確定し、罰金を支払うと種銭が一気に少なくなってしまった。FX取引自体は少額でも可能だが、元手が大きいほど有利で、リスクを抑えた取引ができる。種銭が少なくなると今まで通りの取引はできず、利益は伸び悩んだ。
そこに、アベノミクス相場が始まる直前、米ドル円が70円台まで円高が進んだときに、取引で大失敗。なけなしの種銭と納税前の利益合わせて1800万円を一気に失ってしまった。
「顧問税理士には『あーあ、余計なことしちゃって……』と呆れられ、本当に情けなかったですね……。これを機にFXからは足を洗い、本業に集中することにしました」
そして、告発から8年たった今、本業の利益ですでに3億円近くを返済し、残る負債は4700万円を残すだけとなった。