2009年、埼玉県でスクラップ業を営む磯貝清明氏(39)は、FX(外国為替証拠金取引)で得た4億5000万円の所得を隠し1億6000万円を脱税した罪で、東京国税局に告発された。有名個人トレーダーとして六本木ヒルズレジデンスに居を構え、我が世の春を謳歌していた磯貝氏だったが、そこから一転、重加算税など3億3000万円もの負債を背負ってしまった。
現在、磯貝氏は、本業のスクラップ業の収入で、すでに3億円近い金額を返済しているというが、そこまでの道のりは決して平坦ではなかった。一時はFXで10億もの資産を築いた磯貝氏だったが、リーマン・ショックでの大暴落に巻き込まれ、告発された頃には資産はすでに数千万円に激減していた。しかも、高級外車や3000万円もの現金を友人知人に持ち逃げされたり、利益を返済分に充てていたFXでも1800万円も負けて取引が続けられなくなったりと、トラブル続きだったのだ。
当時、FXで大負けした背景には、「本業」であるスクラップ業が順調だったこともあったという。磯貝氏はこう振り返る。
「本業が順調だったので、気が大きくなってリスク管理が甘くなっていたのが敗因でした。顧問税理士にも『あーあ、余計なことしちゃって……』と呆れられ、本当に情けなかったですね。確実に負債を減らしていかないといけない時期なのに、お金を大きく減らすリスクがある取引はやるべきじゃなかった」
それからはFXから足を洗い、ひたすら本業に打ち込んで収入を納税しようと決めた。とはいえ、働いて稼いでも稼いでも、それが返済に消えていき手元には残らない。そんな磯貝氏をスピード返済へと突き動かしたのは、新婚の妻・A子さん(31)の存在が大きかったという。