磯貝氏が返済を続ける真っ最中に、知人の紹介でA子さんと出会った。知り合った当時の磯貝氏の様子について、A子さんはこう振り返る。
「超高級レストランや一流ホテルのラウンジに連れて行ってくれて、もうお姫様になったような気分でした。すごい借金があるというのは紹介してくれた友人から聞いていましたが、とても信じられなかったです」
「びっくりしたけど、むしろ安心しました」
夢見心地の彼女に、磯貝氏は「俺の家と仕事場を見にこない?」と誘った。言われるままに車に同乗して埼玉へと向かった彼女の目に飛び込んだのは、スクラップが山積みになった工場。そして、「俺の家」であるわずか2畳の居住スペースだった。
「びっくりしたけど、むしろ安心しました」というA子さんは、その日からこの工場に一緒に住み始めたという。負債の額は気にならなかったのか、と尋ねるとA子さんはこう答えた。
「私の父も事業に失敗したり、親戚の保証人になって多額の借金を背負いながらも這い上がりました。どん底を知っている人は強い。私自身、自分で高校の学費を払ったし、結婚相手に楽をさせてほしいなんてまったく思いません」
スクラップ工場には浴室がなく、磯貝氏は流し台で頭と体を洗っていたが、A子さんのためにエステを経営する友人から不要になったシャワーブースを譲り受け、15万円の湯沸かし器を設置した。