飲食業界や建設業界を中心に、今はあちこちで「人手不足」になっていると言われる。それにしては、なかなか好景気を実感できない。大前研一氏が「失業率と景気の関係」を解説する。
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総務省が3月末に発表した2月の完全失業率は「2.8%」。1994年6月に並ぶ、22年8か月ぶりの低水準になった。3%を下回るのも1994年12月以来である。「失業率3%未満」の状況は、事実上の完全雇用とされる。
完全失業者数は188万人で、前月より9万人、前年同月より25万人減少した。厚生労働省が発表した2月の有効求人倍率(全国)も1.43倍と四半世紀ぶりの高水準が続いている。このため雇用が逼迫し、人手不足が深刻化している。倒産した格安旅行会社「てるみくらぶ」に今春入社するはずだった新卒内定者58人の採用に、200社以上が「うちに来てほしい」と名乗りを上げたほどである。
また、内閣府の発表によれば、2012年12月の第二次安倍晋三政権発足と同時に始まった景気拡大局面が51か月となり、バブル期と並ぶ戦後3番目の長さに達したという。しかし、賃金が大きく上昇したり、個人消費が明確に拡大したりしているわけではなく、国民に「好景気」という実感はない。
そうした中で「失業率が低いのに、なぜ景気は良くならないのか?」という疑問が読者から寄せられた。