これに対し、明暗が分かれるかたちとなったのが、本来利益が大きく、その恩恵が広く及ぶとみられてきた自動車メーカーだ。昨年、為替が円高に振れたことが響いたことは間違いない。
利益1兆円超えの“本家”であるトヨタ自動車の2017年3月期の純利益は2割減の1兆8000億円だ。今期も18年ぶりとなる「2期連続の減益」が見込まれている。
「わずか1円為替が円高に動いただけで年間で400億円の減益といわれますが、今回の不調はそれだけが原因ではありません。
2016年3月期までは北米を中心に中国など新興国でも販売台数が好調を維持してきましたが、自動車は高級品なので需要には周期がある。とりわけ最大の市場である米国ではリーマンショック後、反動で起きた販売増が一巡し、頭打ちになっている」(前出・植木氏)
北米市場で苦戦するトヨタ、ホンダ、日産の3社と比べ、対照的に2期連続と最高益を更新したのが、スズキだ。海外市場でもっとも力を入れるインドでの販売台数が11%も増加したことが大きな要因となっている。
少子高齢化の国内で需要が縮小する以上、日本の自動車メーカーが狙うマーケットは海外だ。新興国市場での戦略の見直しが進められるかが、日本の稼ぎ頭である自動車メーカーが再び好調を取り戻すためのカギとなる。これは日本企業の「史上最高益」にさらに積み増す余地があるということでもある。
※週刊ポスト2017年6月2日号