銀行のカードローンを舞台に詐欺が頻発している。だが、当の銀行は抜本的な対策を講じられずにいる。ジャーナリストの藤野眞功氏が、卑劣な犯罪グループの手口を追った。
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「自分たちからは言い出せないから、“外”からやってくれないか」
大手行のセキュリティ担当者が資料を渡してきたのは、2014年末。聞けば、都内の企業A社に勤める複数の社員たちが、カードローンで、各自1000万円前後を借りたあげく、次々に返済が滞り、「自己破産する」と言い出しているらしい。しかし、これだけでは珍しくない。
「カードを作った時期が集中していたから、その企業を調べたら、そもそも誰も『社員』じゃなかった」
担当者によれば、申請には、“偽造”された源泉徴収票や給与明細が使われたという。
融資段階で、彼らの在籍確認はしたのか?
「本人への電話確認も、企業への電話確認もしていた。社内調査では、このケースの全員について『(企業から)在籍している』と言われたと。ところが、あらためて企業に問い合わせると、誰も在籍しておらず、審査時の問い合わせ電話に、その企業の誰が応対したのかも分からなかった。
企業は、勝手に名前を使われただけだという。だから滞納者に直接聞いたんです。そうしたら、カードローン詐欺を専門にしている犯罪グループがあって……これ、かなりヤバいですよ」