「フリーターが一番いい。たくさん金を稼いだことがないから、車のローンも家のローンも組んでないし、クレジットカードで多少キャッシングしていても数十万円レベルですから」
彼らの話に興味を示した若者が「投資したいんだけど、お金がないんです」と言ったところから劇場型の詐欺が始まる。
「まず、聞き分けの良さを確認します。たとえば、コンビニでバイトしてる奴だったら、『海外で成功している(投資先候補の)若手経営者がたまたま日本に来ているから紹介する』と言って、わざとバイト中に誘ってみたり、夜にいきなり電話して遠くまで呼び出したり、こっちが呼んだとき、無理してでも来る奴だったら、いけますね」
もちろん、良いジーンズとピカピカの靴を履いて、ブランドの白いシャツとジャケットを着た「若手経営者」は、詐欺グループの一味だ。その成功話に目を輝かせたフリーターに、10万円程度の借金がある場合、詐欺グループは借金を肩代わりして信頼を得る。だが、真の目的は「信用情報をクリーン」にすることだ。
彼らは次に「金融の専門家」役の仲間を引き合わせ、ロープレ(ロールプレイング)と称する練習を行う。これはカードローンの申し込みに際して“設定”する個人情報と、銀行の確認電話への「(虚偽の)対応」をマニュアル化したものだ。このロープレをやっている時点で、カードローンを申請する者は「それが犯罪」であると認識している。
「でも、ローン返済分を上回る月々の『(海外投資の)配当』を約束しているから、皆、信じます。信じたいんだと思う。ちゃんと返済するんだから最初だけ騙しても、銀行を損させるわけではないって」(同前)
筆者が入手したマニュアルは詳細なものだった。申し込み当時は無職で、複数行から計1000万円以上の貸付を受けた30代前半の男性が実際に使ったマニュアルの一部を紹介しよう。