「架空在籍の電話対応は、事務職で電話をとれる奴を一本釣りしたり、経営者に話をつけて1件につき20万渡したりしていました。それが得意なブローカーもいるんでね」(同前)
そして、フリーターたちは複数の銀行から1000万円近くを引き出す。じつはこのとき、信用情報機関のシステム上の盲点を利用して複数行への申請を行っているが、本稿では詳細は記載しない。
問題は、ここからだ。冒頭に述べた通り、彼らは「自分が借りた金」を(架空の)海外投資のために、犯罪グループに預けてしまうのだ。
犯罪グループはそれから3か月ほど、配当と称する金(月々のローン返済分を上回る額)を、彼らの口座に振り込むが、ほどなく配当は止まる。こうして「加害者(ローン申込者)」は「二次的な被害者」に転落する。
日本の警察は、この手の「事件」にきわめて冷淡だ。被害者たちは警察に「詐欺」を訴えるが、被害者自身が銀行を騙しているため、ほとんどのケースで被害届は受理されない。
筆者が取材したこのグループは約10人の中核メンバーで1年半活動し、7億円近くを集めていた。
では銀行は、この「詐欺」に関して責任がないのか。筆者はそうは思わない。冒頭で、当の銀行(セキュリティ担当者)自身が疑問と危機感を持っているように、総量規制の例外(*)を逆手にとり、(高利での)貸出先を増やしたい銀行が審査を緩め続けてきたからこそ、このような手法が跋扈したのだから。
(*2010年に施行された改正貸金業法によって、年収の3分の1以上の借入ができない「総量規制」が導入された。しかし、対象は消費者金融、信販会社などで、銀行カードローンは対象外となった。)