しかも、大元となる額面の「実収入」は減っています。
1997年の59 万5214円に対し、2016年は52万8103円にすぎません。これはバブル崩壊後、若者を中心に非正規雇用化が進んだことに加え、2000年代には賃下げ目的のリストラが相次ぎ、平均給与を押し上げていた団塊の世代が2007年以降、定年退職していったことも要因といえます。
そのように実収入が目減りする一方で非消費支出の負担が膨らんだ結果、手取りは1997年の49万7035円から2016年の42万9517円へと、月7万円近い大幅な減少となっているのです。
最近、家計の支出に占める食費の割合を示す「エンゲル係数」が2016年に25.8%まで上昇し、29年ぶりの高水準になったことが話題となりました。一般的にエンゲル係数は経済が発展途上にあるほど高くなるといわれ、成熟した日本経済で上昇することは本来考えにくいものです。
統計をまとめている総務省によれば、その背景には輸入中心の食品価格が円安要因などで上昇したほか、共働きの増加に伴って総菜など調理食品の購入が増えたことがあるとしていますが、それだけではありません。
これも家計調査から分析できます。手取りに占める食費の割合を見ると、1997年の食費は7万9879円で手取りの16.07%、2016年は7万4939円で17.45%。金額は下がっているのに、家計に占める割合は明らかに増加傾向となっています。食費以外にも、水道光熱費は4.19%→4.83%、教育費は3.86%→4.59%などと、いずれも金額は20年前とさほど変わっていないのに負担の割合が増えています。
そう考えていくと、いずれも物価が上昇したというより、手取りの減少が大きな影響を及ぼしていると見た方がいい。手取りが増えない限り、家計の負担は増す一方なのです。
【PROFILE】ふじかわ・ふとし/1968年生まれ。生活デザイン株式会社代表取締役。「家計の見直し相談センター」(http://370415.com)で個人向け相談サービスを展開する“お金のお医者さん”。『1億円貯める人のお金の習慣』ほか著書多数。
※マネーポスト2017年夏号