現在、日経平均株価が2万円を超え、世界的に見ても、日本株は投資先として注目されています。だからといって、その勢いがいつまでも続くとは限りません。
いまや日本は貿易赤字が続き、ただでさえ円安に振れやすい状況です。円安は輸出産業にとっては追い風かもしれませんが、同時に円資産の価値が下がるということを忘れてはいけません。長期的な円安トレンドが想定される以上、円以外の資産が上昇するのを見越して海外への投資は外せないものとなります。自らの仕事で海外進出できないなら、まずはお金に旅をさせる。今は、そうした意識を持てるかどうかの、大きな分岐点ではないでしょうか。
海外投資先の筆頭は人口増が続く米国市場
では、具体的にどこに投資すればいいのか。
資産運用によって得られる利益の源泉は、実は2つしかありません。ひとつが、どう考えても割安に放置されているような相場のひずみを見つけ出してリターンを狙うやり方。ただし、これはどちらかといえば短期的な投資で、値動きの幅がどうしても大きくなるため、リスクを伴います。そこでもうひとつ、経済の成長に伴って長期的に資産を殖やす方法に注目します。資産価値の上昇は緩やかなものかもしれませんが、これなら長期的かつ安定的なリターンが望めるでしょう。
そう考えると、すでに人口減社会が到来し、この先低成長しか望めない日本に集中投資するだけではいかにも危うい。それよりも、まずは人口の増えている国に目を向けた方がよほど賢明といえます。
先進国のなかでその筆頭に挙げられるのは、やはり米国です。移民大国でもある米国は年間300万人規模で人口が増加しているうえ、世界各国が金融緩和を続けるなか、いち早く緩和終了を宣言し、利上げも視野に入るほど経済の回復基調が強まっています。
人口増加という観点では中国やインド、インドネシアなどの新興国も有望ですが、市場の流動性や透明性など、投資のしやすさやリスクを考えると、やはり米国に分があります。
なかでも世界的な資産インフレを見据えると、米国の株式と不動産が長期的に有望だと思います。もちろん米国株を取り扱う日本の証券会社も増え、以前と比べると投資しやすい環境になっていますが、個別銘柄に投資するよりは、経済全体の成長を享受した方がリスクは少ない。インフレで資産を目減りさせないためには、大きく殖やすことよりも減らさないことを優先すべきでしょう。そのためにはインデックス(株価指数)に連動するファンドやETF(上場投資信託)の購入をお薦めします。
また、米国の不動産そのものに投資することはなかなか難しいでしょうから、これも米国のリート(不動産投資信託)の値動きに連動するようなファンドやETFに投資する手があります。ただし、不動産は世界的にバブルの兆候が見え始めており、注意が必要です。
他の国で注目しておきたいのは、オーストラリアやカナダ、ブラジルといった資源国。昨今の原油安に伴う資源価格の下落で、それら資源国も低迷が続いています。しかし、世界の主要国が軒並みインフレを志向している以上、原油安もそう長くは続かないでしょう。どこかで原油安に歯止めがかかれば、1バレル当たり80ドルや100ドルまで戻ったとしてもおかしくない。そうなるとインフレが一気に加速するでしょうから、その時に備えて資源関連のファンドやETFを仕込んでおけば、インフレに置いていかれるような事態も緩和できるはずです。
以上、これまで触れてきた投資先に適う注目のファンドを別表にまとめました。長期投資を考え、米国を中心に世界中に投資する商品をチョイスしたので、ぜひ参考にしていただきたいと思います。
バブル崩壊後の長引くデフレによって、インフレに対する危機感がマヒしている方が少なくないかもしれません。しかし、いざインフレが加速すれば、現在の100円や1万円といった価値はあっという間に目減りし、いまの生活を維持することすら難しくなることが予想されます。
インフレが当たり前のように生活を逼迫している欧州の事例を対岸の火事ではなく、他山の石と受け止め、いまのうちから備えておく。今後の日本に高成長が望めない以上、少なくとも海外に資産の出稼ぎをさせておいて、インフレを迎え撃つ覚悟が求められています。
※マネーポスト2015年夏号