為替相場を読む際の参考となるのが、様々な指標だ。しかしその“主役”となる指標が変わりつつあるという。為替ディーラーとして長く活躍したバーニャマーケットフォーカスト代表の水上紀行氏が解説する。
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現在、月間最注目の経済指標は、米雇用統計であることは、言うまでもないことと思います。しかし、最近の米雇用統計は素直ではありません。結局、往って来いばかりです。
なぜかと言えば、米雇用統計に限らず、経済指標の発表時、トレーディングに参加しているのは、投機筋ばかりです。逆に言えば、相場に方向性を与える投資家は、ひとつの指標、あるいは一回限りの発表では投資方針を決めないからです。
投資家は、年金のような多額の資金を預かり運用していますので、極めて慎重な姿勢で対応しています。ですから、一回の雇用統計だけで運用方針を決めることは、絶対ないとは申しませんが、極めて稀だと言えます。
従って、通常の雇用統計は、投資家は傍観しているだけで、相場にチャレンジしているのは投機筋だけとなります。
確かに、投機筋にも意地があり、発表された金曜のニューヨーククローズは、高くあるいは安く持っていくことはありますが、翌週そのまま意図した方向に相場が行かなければ、ポジション調整からの逆方向に相場は向かうことになります。
最近の米雇用統計は、さらに状況が悪化しており、上にも下にも行ききれないとか、従来の失業率や非農業部門就業者数では素直に動かないからといって、平均時給や労働参加率まで持ち出してきており、個人的には、末期的症状だと思っています。
言い換えれば、現在、米国は完全雇用にほぼ到達しており、雇用問題が大きな問題にはなっていないということだと思います。