先に貯蓄をして、残りのお金でやり繰りをする。そのとき、著者は節約を前面に打ち出さない。もちろん無駄遣いをやめるべきだとは言っているが、好きなことには思い切ってお金を使うべきだという。好きなことにお金を使うためだったら、やり繰りも真剣になるのだ。
やり繰りの方法について、著者は具体的なアドバイスをたくさんしている。例えば、家計簿をつける、財布を短期、中期、長期、緊急予備資金の4つに分ける、クレジットカードは1枚、ポイントカードは2枚までとするなどだ。私自身、クレジットカードは40枚以上、ポイントカードは100枚以上持っているから、耳の痛い話なのだが、本書を読むと、とても説得力があり、納得できる。
さらに本書の一番よいところは、運用で一攫千金のような話をしないことだ。投資にはリスクがつきまとう。だから各人のリスクの許容範囲のなかで、投資を決めるべきだという至極まっとうな話をしているのだ。
本書は、おそらく若者に向けて書かれている。確かに、若いうちから貯蓄を始めたほうが有利なのは間違いないが、本書は中高年にも有用だと思う。お金の生活習慣を変えることは、長い老後を乗り切るためにも重要だからだ。
※週刊ポスト2017年7月7日号