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「年金75歳受給論」安倍政権維持に向けた霞が関との手打ちか

 その田村氏はその後、前述の自民党一億総活躍推進本部の本部長代理に就任し、財務省OBと手を組んで年金受給開始年齢引き上げを打ち出したのである。

 では、なぜ、このタイミングだったのか。安倍首相ブレーンで保険数理の専門家でもある高橋洋一・嘉悦大学教授は「内閣支持率低下で官邸のグリップが弱まったと見て、官僚が仕掛けたのではないか」と見る。

「そもそも75歳受給は年金の原理に外れている。年金は収入がない人の老後の生活を補填する制度で、保険である以上、早く亡くなった人の掛けた保険料を長生きした人が受け取ることができる。現在の65歳受給は現役時代に約40年保険料を納め、男女差があるものの、平均寿命の80数歳まで20年ほど年金を受け取ることができる。

 それを75歳受給にすると多くの人は保険料を払っても老後の大部分の期間、年金はもらえずに生活保障が成り立たない。これは保険制度の理念に反する。国の財政負担を減らしたい財務官僚の発想でしょう」

 安倍政権は「景気回復を先折れさせるわけにはいかない」と消費税率10%への引き上げを2回延期し、政治主導で財務省の増税路線を潰してきた。

 それがここにきて年金75歳受給という高齢者への大幅負担増に舵を切ったのは、加計問題では文科省の反乱に遭い、防衛省の造反で稲田朋美防衛相の失態が次々に暴露されるなど窮地に陥り、政権維持のために霞が関と“手打ち”をしたからではないか。高齢者は安倍政権延命の“生け贄”にされようとしている。

※週刊ポスト2017年8月11日号

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