「警察のヘリや防災ヘリの費用は、そこに住んでいる人の税金から払われますが、最近は県外から来た登山者のために…というわけで、有料化の議論もなされているところです。
保険でカバーしている金額が目安になりますが、ヘリはチャーター費用が“1分1万円”と言われ、捜索・救助費用総額は100万~300万円とも。もちろん飛ばしている時間や日数などによって大きく変わってきます」(笹垣氏)
少しでも自分の情報を「残して」おくことが大切
捜索・救助がスムーズに行くかどうかは、登山者の“情報”がどれだけ明らかにされているかによるという。
「以前、『TREK TRACK』の実証実験で冬山に行ったとき、偶然、僕たちがいる場所とは別の谷で遭難事故があったんです。救助の人は、『何の手がかりも残していかない人は困る』と話していました。どこを目指していたのかという計画や、直近どこで誰と話していたか、どんな様子だったかなどの情報は少しでも欲しい。例えば登山者の車だけが残されていて、その後誰ともコミュニケーションもないというような場合、どこを探したらよいかわからず、山全体をしらみつぶしに捜索するしかない。
とはいえ助けにいくほうも命がけです。本当に手がかりが何もないときは、占い師に、どのあたりにいそうか聞くほどだそうです。登山者の位置がしぼられていると、捜索・救助コストが抑えられます」
笹垣氏は、日本人には「どうせやるなら上を目指そう」「せっかくここまで来たのだから」など、“もったいないと思って頑張る精神”があるのが危ないという。山に登るときには入念な登山計画書と最新の装備、そして保険も忘れないようにしたい。