安倍晋三・首相は社会保障政策について、「一億総活躍社会」とともにもう1つのスローガンを掲げている。
「意欲あふれる高齢者の皆さんに、社会の担い手として、もっと活躍していただく。『生涯現役社会』の構築を目指します」(2015年9月24日、第3次内閣改造後の記者会見)
年金制度に詳しい「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏が指摘する。
「日本の公的年金制度は、サラリーマンの定年が55歳の時代は60歳、60歳定年なら65歳という具合に定年の5年後に受給開始になるように引き上げられてきた。大卒のサラリーマンであれば、約40年働き、体が健康なうちにリタイアして年金で第2の人生を送ることができるという制度設計でした。
しかし、『生涯現役社会』が意味するのは、年金財政が厳しく、少子高齢化で現役世代にこれ以上の負担を求めるのが難しいから、高齢者に“死ぬまで働いてくれ。年金をあてにした楽隠居はさせない”という社会を目指すということです」