東京五輪バブルを前にして活況を呈する不動産売買の“間隙”に潜り込んで、巨額のカネを騙し取る。そうした詐欺師は「地面師」と呼ばれる。裏社会で暗躍する彼らの存在が明るみに出た。その被害者は、大手住宅メーカー「積水ハウス」。東京・五反田駅前にマンション用地として取得したはずの600坪、土地の価格70億円のうち63億円は既に支払われたが、土地の所有者は赤の他人がなりすました「偽者」だった。そしてこの偽物の行方は分からない。
地面師は不動産業界の暗部であり、確信犯として事件に関与するのは100人程度しかいない。だが、彼らを中心に通常、複数のチームで動く。土地所有者になりすます人物を用意し、「にんべん」という隠語で呼ばれる偽造屋(呼び名は「偽」の人偏から)に身分証明書、土地の権利書などの書類を偽造させる。さらには、弁護士や司法書士などの「士族」も地面師に協力しているケースがある。
あるときは群れるが、すぐに離反し、離合集散が激しい。今回。積水ハウスを陥れた地面師グループにしても、どれだけ付き合いが深かったか、実際のところは分からない。こうした地面師のやり方には理由があると、地面師に詳しい不動産コンサルタントの長嶋修氏が解説する。