8月29日、5時58分に北朝鮮から日本に向けてミサイルが発射された。6時2分、静まり返った早朝に鳴り響いた、聞きなれない「Jアラート」に恐怖を感じた人も多いことだろう。その直後から、外国為替市場ではドルが売られ、円が買われる「円高」が急激に進んだ。1ドル=109円25銭程度だった水準から、1時間程度で108円30銭近くまで円高が進んだのだ。
北朝鮮から日本に向けてミサイルが発射され、日本の上空を通過したというのに、「安全資産の円が買われた」「資金の逃避先として円が買われた」「有事の円買い」と報道されているが、なぜ危機が起きるかもしれない日本の円が「安全」で「買われる」のか? 外為どっとコム総研の取締役調査部長で上席研究員の神田卓也さんに話を聞いた。
「有事に円が買われるのは、いくつか複合的な理由があると思います。まずは、投機筋(マーケットにおいて、短期的な売買により利益を得ることを目的とした投資家)のポジションが円売りに傾いたという点があります。世界中の投資家の多くは、利益を得るために『低金利の円を売って、高金利の通貨(ドルなど)を買う』という行為をしています。何かが起きて、“そのポジションを解消する”動きに出たとき、『円買い・ドル売り』になりやすいのです」(神田さん)
「リスクがあるから、投資しているものをいったん解消しよう」という動きが、円買いにつながるのだ。