2013年4月の「改正高年齢者雇用安定法」の施行により、企業は社員を65歳まで雇うことが事実上義務化されたものの、多くの企業では「定年延長」ではなく、60歳以上の「再雇用」で対応している。
それに伴い、再雇用後の労働環境を巡る問題も深刻になっている。
同じ仕事をしてるのに……
社会保険労務士の内海正人氏が解説する。
「定年退職した人が同じ会社に再雇用されると、給与は定年前の50~60%程度に減ることがほとんどです。上場企業など大企業の場合、給料が減るのに合わせて仕事の内容も単純業務やルーティンワークに移るので、さらにやる気を削がれてしまう。
一方、中小企業の場合はもっと深刻で、仕事内容も労働時間も変わらないのに給料だけが下がるという事例がよくある。こちらの場合は“不当な賃下げ”として訴訟に発展するケースまであります。たとえば神奈川の運送会社で嘱託職員として再雇用されたトラック運転手3人が、賃金格差を不当として訴えた裁判。一審では原告が勝訴しましたが、二審では逆転敗訴し、今は最高裁で争われています」
定年まで勤めた会社と裁判沙汰になるのは、働く側にとっても複雑な思いがあるはずだ。それほどまでに再雇用時の待遇が過酷な場合もあるということである。