そうした「ごほうび再雇用」は、企業側にとっても「功績を残せば再雇用で厚遇されると現役社員のモチベーション上昇に繋がる」(大手運輸の人事担当者)という意味を持っているようだ。
だが、「そんな扱いを受けられるのは再雇用希望者の1割にも満たない」(前出の68歳男性)という厳しい現実がある。
むしろ、長年勤め上げた者に対して会社がやることとは思えない「ブラック再雇用」が横行している現実がある。現役時代は、サラリーマンの加入する厚生年金や健康保険の保険料負担は「労使折半」だ。しかし、再雇用の際に雇用契約をパートタイムに切り替え、週の労働時間が20時間未満になれば、厚生年金、健康保険への加入は必要なくなる。社会保険労務士の内海正人氏がいう。
「一部の中小企業では、会社側の保険料負担を回避する雇用契約を結ぼうとする動きが出てきている。そうなると、国民健康保険の保険料などを個人として払わなければならなくなる。
こうした動きは違法とはいえませんが、“立場の弱い者にどんどんしわ寄せがいっている”という印象が強い。もともと、年金の給付年齢を60歳から65歳まで引き上げ、企業に再雇用を押し付けたのは国です。そして、“労働条件は会社と本人で決めていい”ということになっているので余裕のない会社側が労働者側に、“給料を払ってやるんだから、保険料は自腹で”と不利な条件を示し、労働者はそれを断われない」
もちろん、あまりに不利な条件を提示されるのであれば、別の働き口を求めるという考え方もある。だが、それも容易ではない。
※週刊ポスト2017年9月15日号