6人いる日銀審議委員は総裁、2人の副総裁とともに合議制で金融政策を決定する。つまり、ついこの間まで日銀中枢にいた人物までもが異次元緩和の副作用に警鐘を鳴らし始めたのだ。金融アナリスト・久保田博幸氏も同意見だ。
「目標としていた『ゆるやかな物価上昇』が達成できていないわけですから、前代未聞の規模の金融緩和で、ツケだけが残った状態です。
出口戦略を取ろうにも、非常に難しい局面になった。日銀が大量保有する国債を手放していくとなると、国債価格の下落、金利の急上昇などが起きるリスクがあるのです」
世界各国における過去の例を見ても、国債価格が暴落して国が資金を調達できなくなると、ゆるやかではない急激なインフレが発生して国民生活に甚大なダメージを与えている。アベノミクスで放たれた“矢”は、経済成長という的に当たることなく、今や国民ののど元に刺さろうとしているのだ。
※週刊ポスト2017年9月22日号