今の日本では企業や個人の金融資産が増え続けているにもかかわらず、その資金が消費や設備投資に回らず、景気が上向かない。そんな「低欲望社会」という、世界でも極めて特異な状況を変えるにはどうすればよいか。最新刊『武器としての経済学』で経済の「新常識」を数々提示した大前研一氏は、常識にとらわれない「経済頭脳」を鍛えることが必要だ、と説く。以下、大前氏が解説する。
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欲望がなくなった日本人には、次の欲望を“見える化”するための「ライフプラン教育」が必要だと思う。そもそも日本人の多くは、学校で社会に出た後の「生き方」を教えてもらう機会がない。教師というのは学校の外で仕事をしたことがないのだから、教えることなどできるはずもない。そのため多くの人が「自分はこういう人生を送りたい」というライフプランを持っていないし、社会に出てからも上司など身近なところに「あの人のようになりたい」という事例が少ない。
だが、ライフプランがないと、今後の人生でどれだけお金が必要で、その資産をいかに形成するかというファイナンシャルプランを立てることができない。
逆に言えば、ライフプランがあって初めてファイナンシャルプランを立てられる。そうして誰もが自分のファイナンシャルプランを持てば、それぞれの欲望をかなえるために金利やマネタリーベースに反応するようにもなる。