日本総合研究所の星貴子・調査部副主任研究員が今年5月に発表した論文は、収入が生活保護水準を下回ったり、預貯金を切り崩しても生活保護水準が維持できない「生活困窮高齢者世帯」は、その予備群も合わせて2020年には531万世帯に、2035年には562万世帯に上ると予測する。これは実に高齢者世帯全体の27.8%に及ぶ数字である。経済ジャーナリスト・荻原博子氏がいう。
「70代の経済状況を示す統計データや今後の予測を見れば、“高齢者は年金をもらいすぎ”という政府の主張と大きな乖離がある。税制改革で年金受給者の負担が増えれば、さらに高齢者の自己破産や生活保護などが増加するのは間違いありません」
そうした現状を知らずに高齢者の負担増計画を進めようとしているのであれば、政治の機能不全である。そして現状を知ったうえでやろうとしているのなら――「国家的犯罪」と断じるしかない。
※週刊ポスト2017年9月29日号