安倍内閣が公務員の定年を60歳から65歳に延長する方針を固めたという。経営コンサルタントの大前研一氏は、今や公務員制度に「一生保障」は不要で、ゼロベースから考え直すべきと提唱する。それでも、もし公務員の定年が延長されたら、日本の財政はどのような状況に陥る可能性があるのか、大前氏が解説する。
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国家公務員の給与は民間企業の従業員の給与水準に合わせることを基本に決められている。その理由を人事院は「公務員の給与は民間企業のように収益・業績などを基にして決めることが難しいため、その時々の景気の動向などを反映している民間の給与に合わせることが最も合理的であり、広く理解を得られる方法であるため」とHPで根拠もなく説明している。地方公務員の給与は国家公務員の給与と、その地方自治体の民間賃金動向などを総合的に勘案して決定されている。
とはいえ、公務員には役職定年制度がないので、一度たどり着いたポストの給与が定年まで続く。今回の検討会では定年延長とセットで役職定年制度の導入を検討しているとみられるが、民間企業の多くでは以前から役職定年制度により定年前に年収が大きく減っているのだから、「民間の給与に合わせ」ているとは言えない。退職金も国家公務員は平均2538万円で、民間企業の平均2460万円を上回っているほか、公務員には「年金払い退職給付」などの特権も多い。
また、地方公務員は国家公務員以上に削減の余地が大きいので、定年を延長して「労働人口を確保」する必要は全くない。そもそも日本の地方自治体には「立法」「行政」「司法」の三権がなく、地方公務員は全国の都道府県や市町村でほぼ同じ仕事をしているのだから、全国共通のシステムを構築してクラウドコンピューティングで運用すれば、人員もコストもすぐ大幅に削減できるのだ。