では、公務員の定年を60歳から65歳に延長したら、人件費はどれほど増えるのか?
公務員は約332万人(国家公務員約58万人、地方公務員約274万人)もいる。2011年の人事院の資料によると、60歳前のノンキャリアの本省課長補佐(行政職6級)のモデル年収は約890万円、地方自治体課長(同)のモデル年収は約790万円だ。仮に、毎年60歳になる人が国家公務員1万2000人、地方公務員7万2000人、60歳以降の給与を「70%水準」に設定して単純計算すると、定年を1年延長するたびに国家公務員は約750億円、地方公務員は約3980億円、合計約4730億円が必要となる。
つまり、定年延長者が65歳に達した時点では年間約2.4兆円も人件費が膨らむわけで、これは消費税を1%引き上げた際の増収分を打ち消すほどの金額だ(新規採用人数は現状のままと仮定した場合)。
ただでさえ日本は1000兆円を超える国の借金でつぶれそうになっている。にもかかわらず、自民党と役人たちはお手盛りの予算を組んで借金を増やし続けている。このまま個別に能力を吟味することなく、公務員の定年延長が認められたら、それはある意味、自然災害以上に国を滅ぼしかねない「ディザスター(大惨事)」となるだろう。そろそろ国民は政府の“暴走”にストップをかけるべきである。
※週刊ポスト2017年10月13・20日号