〈金銭信託収益金のお知らせ〉──そう題されたハガキが、30代の男性・Aさんの元に届いた。そこに記された数字を見ると、日本銀行による低金利政策の現実を痛切に感じることができる。
普段、金利の低さを感じることがあるとすれば、銀行などで通帳を記帳したときに目にする「オリソク」の横に記載される数字だろう。普通預金では2月と8月につく金利は、大手銀行の場合で現在「年0.001%」。「利息なんかゼロも同然」と言われるのも当然だ。イオン銀行でイオンカードセレクト保有者のみ「普通預金0.1%」とされるのが話題となるなど、多くの人が“少しでも高い金利”を得ようと情報収集をしている。
そんな中、Aさんに届いたハガキは、「低金利政策」の酷さを物語っていた。ハガキの送り主はみずほ信託銀行だ。〈いつもお引き立ていただきありがとうございます。お預けいただいております金銭信託の今回決算の収益金は、下記の通りでございます〉とあり、こんな数字が並んでいた(画像参照)。
〈元本残高(決算日現在) 10,001,568円
収益金 750円
税金20.315% 151円
お手取収益金 599円〉
「父から私の1歳の娘、つまり“祖父から孫へ”の教育資金贈与でした。父が退職金をもとに『死ぬまで持っておいてもしょうがないから』ということで、1000万円贈与してくれたのです。将来、私立の中学校や高校に進学したらあっという間に使い切ってしまうとは思いますが、ありがたい贈与でした。ただ……」(Aさん)
教育資金贈与は、高齢者世代から子育て世代への資金移転を目的として2013年に政府が鳴り物入りで導入した制度だ。1500万円を限度として、祖父母などから孫などへこの制度を用いて贈与した場合、贈与税がゼロになるというもの。専用の口座を金融機関に開設し、そこから引き出すには学校や塾などの領収証が必要になる。そのことによって「教育資金限定」で非課税となるのだ。
Aさんが声を落としたのは、前述した「収益金」の少なさだ。みずほ信託に預けた元金1000万円に対し、今年3~9月までの6か月間の決算で増えたのはわずか750円。しっかり税金も引かれて手取りは「599円」だった。今時、ちょっとしたラーメンも食べられない。Aさんが続ける。
「6か月間の配当率は、わずか『0.015%』ですよ。元本保証の信託だからしょうがないとは思いますが、ネット系の銀行なら普通預金でももっと金利がつくケースがあります。仮定の話をしても仕方がないですが、昔の『金利6%』の時代なら、毎年60万円ずつ増えていって、娘が中学校に入る頃には1700万円くらいになっていたはず。日銀の低金利政策はいつになったら終わるんですかね……」