公的年金に対する不安が高まる中、注目されているのが“自分で年金を作る”仕組みである「個人型確定拠出年金(iDeCo)」だ。ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子氏が、老後資金を作るための制度の使い方とポイントを解説する。
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老後のために残しておきたいお金は、夫婦の場合で約2500万円、単身の場合で約1500万円程度は見積もりたいものです。現在の高齢者の家計簿を見ても公的年金ではすべての生活費をまかなうことができず、平均的に毎月3万~5万円程度貯金を切り崩して生活をしているからです。65歳以降90歳まで生きるとすると25年間で900万~1500万円の生活費が不足し、予備費もひとり当たり500万円程度欲しいからです。
2500万円という大金を育てるのにぜひ活用したいのが「個人型確定拠出年金(iDeCo)」です。公的年金制度に上乗せして給付を受け取れる私的年金制度で、2017年1月から原則として60歳未満のすべての人が利用できるようになりました。60歳まで毎月一定額を拠出して、自分が指定した金融商品で運用をし、それを老後資金に充てることができます。
iDeCoのポイントは税制優遇が手厚いこと。拠出時(拠出した金額が全額所得控除され、所得税率が10%の人の場合は住民税と合わせて20%の節税効果となる)、運用時(一般的な預金の口座や証券口座では利益に対して約20%の税金がかかるが、この制度では非課税)、受取時(年金受け取りの場合は公的年金等控除が、一時金受け取りの場合は退職所得控除が適用される)の3段階で税制優遇が受けられます。
ただし、この制度の最大の注意点として、拠出したお金は原則60歳まで引き出せないという点が挙げられます。さらに、加入期間が10年未満だと受給開始が可能となる年齢が60歳ではなく61~65歳になる点も忘れてはいけません。