安倍晋三首相が掲げる新たな目玉政策に「人づくり革命」がある。経営コンサルタントの大前研一氏が、人づくりを可能にする条件について解説する。
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前号では、安倍内閣が検討している「公務員の定年延長」が、いかに日本の活力を奪う愚策かを論じた。また、グローバルな企業経営の現場を知らない政治家や官僚が進める「働き方改革」も論外だ。頭脳労働者にまで“上から目線”で縛りをかける暴挙でしかない。
さらに、安倍首相は新たな目玉政策として「人づくり革命」を打ち出した。そして、そのための保育所・幼稚園の無償化などに2兆円規模の予算を投入すると表明し、これに北朝鮮情勢を加えて「国難突破解散」(実際は“保身解散”)の争点にする、という乱行に出た。
これまで安倍内閣は「地方創生」「女性活躍」「1億総活躍」「働き方改革」と次々に目玉政策の看板を掛け替え、それぞれ担当相を置いてきたが、いずれも成果は全く上がっていない。にもかかわらず、また「人づくり革命」という新しい看板を掲げて担当相を新設した。安倍首相は「人づくり革命」を「1億総活躍社会を作り上げる上での本丸」と位置付けたが、これらの拡散した政策を、どのように辻褄を合わせて収拾するのか、甚だ疑問である。