私は「優れたトップは一つのことだけを言う」「ダメ経営者は次から次へと命令して結局何もできない」と指摘してきたが、まさに安倍首相はダメ経営者の典型だ。“仕事人内閣”と称した内閣改造からわずか2か月足らずで解散総選挙、という気の散り方である。解散の大義を問われ、消費増税の使途変更について国民の信を問う、とした欺瞞に至っては言葉を失う。
企業経営の場合、新規事業を立ち上げたら、その成否を総括しないまま同じような新規事業を始めることなどあり得ない。それは国家運営においても同じであり、そんな常識も持ち合わせていないような、人材なき政治家や官僚にそもそも「人づくり革命」などできるはずがないだろう。
しかも、政府は「人づくり革命」の具体策を話し合うために経団連会長や連合会長、IT企業を経営する大学生ら「有識者」による「人生100年時代構想会議」なるものを設置した。そのテーマは「教育の負担軽減や無償化と社会人の学び直し」「高等教育改革」「企業の人材採用の多元化と多様な形の高齢者雇用」「高齢者向け給付中心の社会保障から全世代型社会保障への改革」の四つだという。
あまりにお粗末でコメントする価値もないが、単なる税金の無駄遣いでしかない。
同会議では、議論の中核となる論者としてベストセラー『LIFE SHIFT』(東洋経済新報社)の著者でロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットン教授を起用した。
グラットン教授は、2007年に日本で生まれた子供の50%が107歳まで生きると予想。その結果、従来の「教育→仕事→引退」という3ステージの単線型人生から、多くの人が転身を重ねて複数のキャリアを経験するマルチステージの複線型人生にシフトするとして、これからは年齢に関係なく知識や技能を身につけるべきだと主張している。