親の認知症対策として最近注目されている「家族信託」と「成年後見制度」。それぞれにメリット/デメリットがあり、補完しあって超高齢社会に役立つ仕組み・制度だという。ただし、家族間で柔軟に財産管理ができる家族信託については、認知症を発症した後では契約を結べない点には注意が必要だ。
対策をしないまま親が認知症になり、困りごとにぶつかった場合は、成年後見制度が唯一の選択肢となる。司法書士みそら総合事務所代表で、家族信託専門士の酒井俊行さんに詳しく聞いた。
「成年後見制度は、認知症などで判断能力が不充分な人の生活や療養看護を支援し、財産を守るための制度です。
本人の意向を実現するために積極的な運用も行える家族信託とは違い、本人の生活の質を維持することが目的です。そのために日常の生活費の管理、必要に応じて定期預金の解約や不動産の売却なども、裁判所が選任した成年後見人が行います。この場合の本人の意思確認は不要。また本人の住まいや介護施設、介護サービスなどの契約が行えるのも成年後見人の権限。これは家族信託ではできません。
ただし成年後見制度は、裁判所への申し立てが必要で、後見がスタートするまでに1~2か月程度かかります。最終的に誰を後見人にするかは裁判官が判断し、司法書士や弁護士が選任されることもあり、必ずしも子が親の後見人になれるとは限りません。