終の住みかを決めるときに、「誰と住むか」は、「どこに住むか」より、もしかすると大事な問題かもしれない。すでに“住み方”を決めた先人の思いと覚悟とは──。著書に『おひとりさまの終の住みか』(築地書館)などがあり、ひとり身の老後問題を取材してきた“ずっとおひとりさま”のジャーナリスト、中澤まゆみさん(68才)は自分の老後についてこう語る。
「私の場合、今は東京に暮らしていますが、いずれは長野県の実家に戻ることも考えています。ただ、実家があるとはいえ、実際にはネットワークがまだ少ないので、下準備が必要だと思い、ここ4年ほど、母の遠距離介護の機会を利用し、地元の医療と介護の情報収集と人脈作りをしています」
1人で生きていく場合、地域の人たちの支援が必要となる機会がどうしても多くなる。それは物質的なサポートに限らない。日々の暮らしの知恵から施設の良し悪し、困った時に頼る場所まで、地元の人が持つ情報はとても重要だ。ひとり身にとってお金に増して大切なのは情報だと中澤さんは言う。
例えば、ひとり暮らしで認知症になったり、介護が必要になった時、ケアが充実した小規模多機能型居宅介護施設があれば心強い。日中はデイサービス、体調が悪い時は宿泊でき、訪問介護もしてくれるからだ。こうした施設の有無や評判は地域の人じゃないとわからない。
「ただ情報を一方的にもらうのではなく、自分が地域のために何ができるか、という意識を持ち、自分ができることを探す姿勢も大切です。地域活動をしていると自然と仲間はできます。元気なうちから、“お互い様”をやっておくと、それが将来に確実につながります」