そこまで準備していたが、84才にして突然の方向転換。そこにはやはり、娘さんの存在があったと言う。
「娘は、私の箸の上げ下ろしにまで苦情をいうタイプだから、毎日けんかは絶えません。でも、私の生き方について批判したことは一度もない。そのことには本当に感謝しているんです。ですから最後に家くらいは遺してやりたかったんです。私が老人ホームに入って、家を処分したら、娘の住む場所がなくなってしまうから。それに、親子で住んでいる方が、相続税が軽減するんです」
親1人子1人で暮らす場合は、自分がどう暮らすかだけでなく、相続対策も考えるべき課題かもしれない。今後は、ギリギリまでこの家に暮らし、介護が必要になったらもっと格安な施設に移るという。
「介護施設に入れるだけの最低限の資金は残しています。あとは私自身が、介護をしてくれる人に、気持ちよくお世話をしてもらえるような人間にならないといけませんよね(笑い)」
最後に、樋口さんが考える終の住みかへの備えを教えてもらった。
●動ける今のうちに、階段に手すりをつけ、生活スペースを1階に集約。自宅のバリアフリー化を進める。
●葬儀など死後の始末をしてくれるNPO法人に、生前契約をすることも視野に入れておく。
●どこで死んでも後悔がないように、今を生ききる。
※女性セブン2017年11月9日号