選挙期間中、消費税引き上げか凍結かと、真剣に考えた国民の姿を安倍晋三・首相と官僚たちは薄笑いを浮かべて眺めていた。政府は選挙が終わった途端、それまで議論の俎上になかった“消費税以外”の増税策を次々打ち出してきた。
総選挙で自民党が圧勝した翌日の10月23日、新聞・テレビが一斉に報じた税制改正の議論は、選挙の余波でほとんど話題にならなかったものの、“違和感”を抱いた国民はいたはずだ。
「会社員の給与所得控除見直し議論 政府税調」(NHK)
「経済政策、仕切り直し 政府税調が所得税改革めざす」(日経新聞電子版)
所得税? 安倍首相が選挙で公約したのは消費税の税率10%への引き上げだったはずだ。それがいつの間に所得税の見直しにすり替わったのか。メディアごとに見出しは違うが、伝えたのは同じ事実だった。
〈政府税制調査会は23日に総会を開き、懸案の所得税改革の議論を再開した。(中略)消費増税は選挙でも話題になったが、来年度改正には直結しない公算が大きい。中長期のあるべき税制を専門家が論じる政府税調の舞台では当面、所得税改革を主に取り上げる構え〉(日経電子版)
「懸案の所得税改革」といきなりいわれても、国民は聞いたことがない。安倍首相や麻生太郎・財務相は選挙演説で所得税増税にはひとことも言及しなかったし、選挙期間中(10月16日)に開催された政府税調の議論のテーマは「電子納税」で、所得税の議論はなかった。