給与所得控除の縮小は、そのまま所得税と住民税の増税につながる。財務省はどのくらいの規模のサラリーマン増税を想定しているのか。
政府税調の説明資料の中に重要な試算があった。現在、給与所得控除額は年収162万5000円以下は65万円、1000万円を超えると上限の220万円になる。
その中間に当たる年収632万円の会社員の場合は、約180万円の給与所得控除が認められている。しかし、財務省は総務省の家計調査をもとにサラリーマン世帯の消費支出から必要経費とみなされる金額を積み上げ、年収632万円の会社員の“本当の必要経費”は「年間約25万円」と試算している。かかっている経費が少ないのに、水増しして節税していると言いたいのだ。
財務省が算定したサラリーマンの必要経費の内訳(年額)はとんでもない水準だった。
■衣料品:2万1387円(月額1782円)
■身の回り品:1万2336円(同1028円)
■理容・クリーニング:1万1539円(同962円)
■新聞・書籍:3万9321円(同3277円)
■小遣い:15万3786円(同1万2815円)
■つきあい費:1万1741円(同978円)
――など合計約25万円とされている。
こんな金額の経費では、「衣料費」はワイシャツを数枚買えば、その年はスーツ1着も買えないし、「理容・クリーニング費」は1000円カットに毎月通って散髪するのもNG。「新聞・書籍費」の金額では朝日新聞や読売新聞の朝夕刊のセット版を宅配で購読することはできない。財務省はサラリーマンの新聞購読は“経費に認めない”と考えているらしい。
さらに「接待など業務上のお付き合い」(財務省主税局総務課)とされる「つきあい費」は“1年2~3回”ほど居酒屋に飲みに行くのがやっとの額だ。